Sustainability サステナビリティコミットメント

竹内製作所を取り巻く事業環境の変化とその対応

1963年の創業以来、オイルショックやリーマンショックなど様々な危機がありましたが、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も、当社グループの事業に大きな影響を及ぼしました。当社グループは、連結売上高の約95%以上を欧米で獲得しており、その欧米をはじめ世界の全ての販売地域で影響を受けました。ただ、当初はもっと深刻な影響が及ぶと予想していましたが、製品需要は想定ほど落ち込むことなく、回復へと転じました。これは、当社製品が衣食住の「住」に深く関わり、社会インフラを支える事業(Essential Business)に必要不可欠であり、コロナ禍にあっても土木工事が早期に再開されたためです。

近年の社会変化に目を向けますと、各国の工事現場で人手不足が進んでおり、建設機械のオペレーターの人手不足、さらには技量不足が今後問題になると予想しています。そこで当社では、オペレーターの練度が低くても良いよう、一定の掘削作業を機械が自動的に行う開発に取り組んでいます。また、自動車のエンジンから電気モーターへのシフトも注目すべき変化です。当社は、建設機械市場でも地球環境に優しい製品、ゼロエミッションの製品の需要が高まり、電動化の波が確実にやってくると考え、他社に先駆けて電池式ミニショベルの開発に取り組んでまいりました。2009年には、世界初(当社調べ)となるリチウムイオン電池式ミニショベルを開発しましたが、当時は価格とスペックが市場ニーズに合わず、量産には至りませんでした。そして2021年内に、当社として初の電池式ミニショベルの量産機種を、いよいよ上市できる見通しとなりました。(2021年7月より出荷開始しました。)

このように課題を先取りして、創造・挑戦・協調の精神で取り組んできたことが、当社の成長の大きな原動力であると私は考えています。

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竹内製作所のビジネスモデルの“強み”とは

1971年に当社が世界初のミニショベルを開発したきっかけは、つるはしやスコップで人力の作業を行っていた現場から、あまりに肉体的な負荷が大きいので、この作業を機械化できないかという要望をいただいたことです。ミニショベルの登場により、人力で1週間かかっていた工事が1日で終わるということで、多くの皆様に喜んでいただけました。その後、海外でも喜んでもらえるだろうと考え、最初はアメリカに持っていきましたが、広大なアメリカにおいて、当時ミニショベルは競合どころか市場すらない状況でした。それでも、住宅街での細かな作業に適したミニショベルは、アメリカでも大きな反響を呼び、やがてミニショベル市場は世界に広がっていきました。

1986年に当社が世界で初めて開発した、土砂やがれき、雪などを運搬するクローラーローダーも、当時のタイヤ式ローダーでは、雨が降ると土砂のぬかるみでスタックし、使い物にならないことを現場で見たことがきっかけです。足回りをミニショベルのようなクローラー式にすれば、喜んでいただけると考えたのです。

こういった製品開発、市場開拓の精神は、「世界初から世界のTAKEUCHIへ」の企業理念として、当社グループで受け継がれています。誰かのモノマネではなく、独自の製品を世に送り出すことに注力してまいりました。

当社の強みの中で、私がもっとも「当社らしい」と胸を張っているのは、お客様の声や要望を製品に反映させるまでの「スピード」です。「このアイデアは良い」「この改善は行うべき」と思ったら、すぐに動き出す。この小回りの良さ、瞬発力、機動力は竹内製作所の一番の強みだと考えています。当社では設計者が現場に行き、自分の目と耳で情報を得て、製品開発しています。だからこそ、お客様に喜んでいただける製品を産み出せるのだと思います。また私自身も現場に赴いて、現地の皆様の声を聞き、お客様や設計者の視点を経営判断に活かせるように強く心がけています。

二番目の強みは、製品のクオリティです。お客様は「丈夫で壊れにくく、長持ちする建設機械」とのご期待を当社にお寄せくださっています。ここにプラスαの付加価値を提供できるかどうかは、当社の今後の勝負どころとなります。これまで当社は、耐久性に加えて、操作性や快適性、そしてパワフルであることにこだわり抜いて製品を開発してきました。この強みを発展させつつ、今後は自動化や電動化といった性能面や環境面などのプラスαに磨きをかける必要があると考えています。

SDGsの達成に向けて

当社では、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献するために、グローバルな社会課題と自社の中長期の成長戦略を踏まえ、優先的に取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を特定しました。私たちは、本業である小型建設機械の開発・製造・販売を通じて、持続可能な社会の実現に貢献し、企業価値の最大化を図ってまいります。

これまでの社是、企業理念、築いてきた基本戦略を引き継ぎつつ、気候変動や労働環境の改善、人手不足の解消等のグローバルな社会課題に向き合い、研究・開発から調達、製造、販売、アフターサービスに至るまで、サプライチェーンの最適化に取り組んでまいります。

当社が開発に取り組んできた電池式ミニショベルは、排出ガスがゼロで静かなので、地球環境にも作業環境にも優しい製品で、住宅街、地下、屋内での利用が見込めます。電池式ミニショベルの本格普及までの間、従来のディーゼルエンジン式のミニショベルの環境性能の向上にも取り組んでまいります。

当社グループでは人財を最大の経営資源と認識し、職場の安全はもちろんのこと、従業員一人ひとりが生き生きと活躍できるよう、安心して働きやすい労働環境の整備に注力してまいります。現在の当社は、取締役や管理職、あるいは一般職の社員に至るまで、女性の割合が低いので、男女比のバランスを中長期で是正していく考えです。

サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現に向けて、製品のリサイクルにも着目しています。建設機械の原材料としてプラスチックを多用するのではなく、製品の耐久性とリサイクルのしやすさから、鉄に主眼を置いた設計を心がけています。将来的には、自然界に分解されやすいプラスチックや油など、地球環境に優しい素材を製品に取り入れてまいります。

さらなる成長に向けて

建設機械市場は、自動化や電動化といった変革期を迎えようとしています。当社は、市場の時流に先んじて、独自の製品開発に取り組んでまいります。また、当社グループが持続的に成長していくためには、売上高や利益といった財務面の成長だけを追い求めるのではなく、ESG(環境、社会、ガバナンス)に代表される非財務面での取り組みを強化していく必要性を強く認識しております。SDGs等の社会課題の解決を経営の土台に位置づけ、お客様、お取引先様、株主様、地域社会の皆様、従業員をはじめとしたステークホルダーの皆様が当社グループに何を期待するかに耳を傾け、経営ビジョンを共有していきたいと考えております。

私は、先代社長から「創造・挑戦・協調」の精神を受け継ぎました。ミニショベル市場を開拓・創造し、市場からの信認を勝ち得たのは、この精神があったからこそだと確信しています。自戒の意味も含めて、社員には「過去の成功に甘えることなく、常にチャレンジャーであり続けよう」と伝えています。

この度のコロナ禍を含め、世界経済や為替相場などの事業環境の先行きが不確実で不透明な今だからこそ、「創造・挑戦・協調」の精神で失敗を恐れることなく、当社グループが一丸となって、変革に挑んでいきたいと考えます。

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